「宇宙、生命、エネルギー」若手研究者による Rising Sun
―自然科学研究機構若手研究者賞記念講演―
詳しくはこちらをご覧ください。
自然科学研究機構では、エイベックス・エンタテインメント株式会社から、天皇陛下御即位20周年を祝う奉祝曲「太陽の国」(歌唱:EXILE)の収益の一部についてご寄附頂いたことを受け、新しい自然科学分野の創成に熱心に取り組み、成果をあげた優秀な若手研究者を表彰することを目的として「自然科学研究機構若手研究者賞」を創設しました。
「宇宙、生命、エネルギー」若手研究者による Rising Sun
―自然科学研究機構若手研究者賞記念講演―
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自然科学研究機構では、エイベックス・エンタテインメント株式会社から、天皇陛下御即位20周年を祝う奉祝曲「太陽の国」(歌唱:EXILE)の収益の一部についてご寄附頂いたことを受け、新しい自然科学分野の創成に熱心に取り組み、成果をあげた優秀な若手研究者を表彰することを目的として「自然科学研究機構若手研究者賞」を創設しました。
自然科学研究機構では、エイベックス・エンタテインメント株式会社から、天皇陛下御即位20周年を祝う奉祝曲「太陽の国」(歌唱:EXILE)の収益の一部についてご寄附頂いたことを受け、新しい自然科学分野の創成に熱心に取り組み、成果をあげた優秀な若手研究者を表彰することを目的として「自然科学研究機構若手研究者賞」を創設しました。
今回、生理学研究所(岡崎統合バイオサイエンスセンター)の東島眞一准教授が受賞しました。授賞式と記念講演が6月10日に秋葉原にて行われます。
授賞式・記念講演会
「宇宙、生命、エネルギー」若手研究者によるRising Sun
日時:平成24年6月10日(日)午後1時~
場所:UDX THEATER (東京都千代田区外神田4-14-1)
申し込み:事前申し込みが必要です(E-mailのみ受け付けます)。無料です。
※ 詳しくは、http://www.nins.jp/をご覧ください。
あなたが今見ている物は、本当にその形と色ですか?ありえないことが普通におこる錯視の不思議な世界。せいりけんの脳科学者が、不思議な脳科学の世界にご招待します。
毎年恒例の岡崎高校スーパーサイエンス部のみなさんの科学実験ショーも開催します!
第1部 錯視の不思議な世界 : あなたは脳にだまされている!
講師:自然科学研究機構生理学研究所 小泉 周(あまね)准教授
第2部 岡崎高校SSH部による科学実験ショー
愛知県立岡崎高等学校スーパーサイエンス部
日時:5月26日 13:30より
場所:岡崎げんき館 大講堂
予約不要・入場無料です。
詳しくはこちらをご覧ください。
これまで脳の神経活動を知るには、脳波計のように脳の表面の電気活動を測るか、fMRI(機能的核磁気共鳴法)のように脳の血流を測ることしかできませんでした。したがって、脳内部の神経活動を知るには、脳の中に電極を刺していくなどの方法しかなく、脳に傷をつけてしまうこともありました。今回、生理学研究所の渡辺秀典研究員、西村幸男准教授らの研究チームは、脳表面でとらえた硬膜下皮質表面電位(Electrocorticogram ; ECoG)という電気活動から、脳の内部の神経活動をより正確に推定することに成功しました。今回の研究成果は、米国神経科学専門誌(ジャーナル・オブ・ニューラル・エンジニアリング電子版5月9日)に掲載されました。 |
今回、研究チームは、サルが腕を動かしているときの脳(運動野)の神経活動を、東京大学・鈴木隆文講師の開発したECoG電極を用いて、脳表面の32カ所(1ミリ間隔)から同時計測した電気信号から脳内部(脳表面下0.2 mmから3.2 mm)の神経活動を高い精度で推定することに成功しました。この際、神経活動の推定にはATR脳情報解析研究所の佐藤雅昭所長の開発した計算手法(“Sparse linear regression algorithm”)を用いました。つまり、これによって、脳の中に電極を刺し込まなくても、脳の表面から脳の内部の神経の活動を高い精度で知ることができるのです。
研究チームは、これまで、脳の活動に同期して義手などのロボットを動かす“ブレイン・マシン・インターフェース”という技術の開発を行ってきました。今回の研究成果によって、脳の中の神経活動を脳に電極を刺さずに知ることができれば、脳に優しい低侵襲なブレイン・マシン・インターフェースの開発につながるものと期待されます。
本研究成果は、文科省脳科学研究戦略推進プログラム課題A「ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)の開発」の一環として、ATR脳情報研究所、東京大学との共同研究で行われました。
1.脳表面の硬膜下皮質表面電位(Electrocorticogram ; ECoG)でえられた電気活動から脳内部(脳表面下0.2 mmから3.2 mm)の神経活動の高精度の推定に成功しました。
脳表面に1 mm間隔で配置した32か所の電極による硬膜下皮質表面電位(Electrocorticogram ; ECoG)から、脳内部の神経細胞(脳表面下0.2 mmから3.2 mm)の電気活動を高い精度で推定することに成功しました。実記録と推定値がほぼ一致しました。
脳に優しい低侵襲なブレイン・マシン・インターフェース開発へ
手足に障害をもった方に対して、脳の活動に同期して義手や義足などのロボットを動かす“ブレイン・マシン・インターフェース”という技術の開発がおこなわれています。今回の研究成果によって、脳の中の神経活動を脳に電極を刺さずに知ることができれば、脳に優しい低侵襲なブレイン・マシン・インターフェースの開発につながるものと期待されます。
Reconstruction of movement-related intracortical activity from micro-electrocorticogram array signals in monkey primary motor cortex.
Watanabe H, Sato M, Suzuki T, Nambu A, Nishimura Y, Kawato M, Isa T (2012)
Journal of Neural Engineering (5月9日電子版掲載)
<研究について>
自然然科学研究機構 生理学研究所
研究員 渡辺 秀典(ワタナベ ヒデノリ)
Tel:0564-55-7763 Fax:0564-55-7766
E-mail:watanabe@nips.ac.jp
准教授 西村 幸男 (ニシムラ ユキオ)
Tel: 0564-55-7766 FAX: 0564-55-7766
E-mail: yukio@nips.ac.jp
<広報に関すること>
自然科学研究機構 生理学研究所 広報展開推進室 准教授
小泉 周 (コイズミ アマネ)
TEL 0564-55-7722、FAX 0564-55-7721
E-mail: pub-adm@nips.ac.jp
研究者が所属する研究機関別 採択表 上位15機関
(平成24年度 新規採択+継続分)
機関名 | 採択率(%) | 採択件数 | |
1 | 政策研究大学院大学 | 88.5% | 54 |
2 | 一橋大学 | 83.6% | 173 |
3 | 東京外国語大学 | 78.4% | 116 |
4 | 国立教育政策研究所 | 77.2% | 44 |
5 | 専修大学 | 73.7% | 73 |
6 | 国立遺伝学研究所 | 73.2% | 90 |
6 | 中京大学 | 72.2% | 65 |
8 | 京都女子院大学 | 72.0% | 36 |
9 | 東京芸術大学 | 71.7% | 66 |
10 | 学習院大学 | 71.3% | 92 |
11 | 愛知県がんセンター(研究所) | 71.2% | 42 |
12 | 東京学芸大学 | 71.1% | 133 |
13 | 生理学研究所 | 70.7% | 87 |
14 | 東京大学 | 70.6% | 3503 |
15 | 国立民族学博物館 | 70.4% | 38 |
注1)平成24年度科学研究費のうち、特別推進研究、特定領域研究、新学術領域研究(研究領域提案型)
(継 続領域)、新学術領域研究(研究課題提案型)、基盤研究(S,A,B,C,)、挑戦的萌芽研究、若手研究(S,A,B,)、及び研究活動スタート支援の研究課題(新規採択+継 続分)の当初配分について分類したものである。(特別推進研究、新学術領域研究(研究領域提案型)(新規領域)、基盤研究(S)、研究活動スタート支援の 新規課題を除く)
注2)研究代表者が所属する大学等により整理している。
注3)応募件数が50件以上の大学等を分析対象としている。(採択率=採択件数/応募件数)
生理学研究所・広報展開推進室では、日本学術振興会と共催で、ひらめき☆ときめきサインエンスの高校生体験学習会を開催します。
ヒトの脳や体は電気信号で動いていますが、この電気信号はとっても小さいので普段は感じることはできません。
そこで簡易筋電位計測装置「マッスルセンサー2」を使用してこの電気信号を感知して、レゴブロックでつくったロボットアームを動かしてみましょう。
※参加費無料。使用したマッスルセンサー2は参加各校1台お持ち帰りいただけます。
記
日時: 8月27日 土曜日 12:30集合
会場: 自然科学研究機構 岡崎コンファレンスセンター
対象: 高校生20グループ(参加校1校で1人の、理科教員の引率をお願いします)
オンライン申し込み:http://www.nips.ac.jp/public/hiratoki
お申込み締め切り:7月6日(金)17:00まで
自然科学研究機構・生理学研究所の伊佐正教授・木下正治特任助教らと福島県立医大・京都大学の共同研究チームは、新しい二種類のウイルスベクターを用いる ことで特定の神経回路選択的に遺伝子を導入する方法を新たに開発しました(二重遺伝子導入法)。この手法により、進化の過程で霊長類において新しく脳から の電気信号を筋肉に伝える直接の経路ができてきた一方で、取り残されてしまったと考えられてきた“間接経路”が、実は私たち霊長類においても手指の巧みな 動きを作りだすことに重要な役割を果たしていることを発見しました。文部科学省・脳科学研究戦略推進プログラムの共同研究プロジェクトによる研究成果で す。英国科学誌Nature(6月17日号電子版)に掲載されます。 |
ヒトを含めた高等な霊長類は、手を巧みに動かす能力を身につけたことで、爆発的な進化を遂げたとされています。このように手指を一本ずつ器用に動かす能力は、大脳皮質の運動野が、筋肉を支配している脊髄の運動神経細胞に直接接続するようになったからと考えられてきました。一方で、ネコやネズミといった、より下等で手先が不器用な動物では大脳皮質からの指令は脊髄の介在ニューロンを介して間接的にしか運動神経細胞につながっていません。このような“間接経路”は我々霊長類にも残っていますが、何をしているのかはよくわかっていませんでした。このように進化の過程で残された“古い回路”が高等動物の脳でも使われているのか?それとも邪魔だから抑制されているのかについては、多くの議論がありましたが決着はついていませんでした。今回、自然科学研究機構・生理学研究所の伊佐正教授・木下正治特任助教らと福島県立医大・京都大学の共同研究チームは、新しい二種類のウイルスベクターを組み合わせることで特定の経路選択的に遺伝子を導入する方法(二重遺伝子導入法)を新たに開発し、この間接路を中継する脊髄介在ニューロン系(脊髄固有ニューロン:propriospinal neuron)を選択的に抑制することに成功しました。これにより“間接経路”が、実は手指の巧みな動きを作りだすことに重要な役割を果たしていることが明らかになり、長年の論争に決着がつきました。今回の研究で鍵となったのは、2種類の新しいウイルスベクターを組み合わせて、特定の神経回路を選択的・可逆的に遮断する技術の開発に成功したことです。これまで生殖細胞での遺伝子改変が可能だったマウスではこのような操作は可能でしたが、霊長類では不可能でした。今回開発された方法を用いることで、将来、特定の神経回路を標的とした脳神経の遺伝子治療が大きく進むことが期待されます。
伊佐教授は「今回開発した霊長類への二重遺伝子導入法は、同じ高等哺乳類である人間の脳神経の遺伝子治療にも応用できる方法として期待できます。また、脊髄は単なる反射の経路ではなく、精緻な運動を制御する高度な役割を担っていることを見つけた教科書の常識を覆す発見です」と話しています。
文部科学省・脳科学研究戦略プログラム(課題C)にもとづく、福島県立医科大学・京都大学との共同研究による研究成果です。
1.霊長類の複雑な脳神経回路から特定の神経回路を選り分ける“二重遺伝子導入法”の開発に成功しました。
2.1の二重遺伝子導入法を、脊髄の中でも脳から電気信号を直接手指の筋に伝える直接経路と並行する“間接経路”(脊髄固有ニューロン)に適用したところ、この“間接経路”の神経伝達だけを抑えることに成功しました。
3.2によって、脊髄の“間接経路”も指先の巧みな動きをコントロールしていることを発見しました。
脊髄の“間接経路”に二重遺伝子導入法を適用しました。逆行性ウイルスベクターであるHiRetウイルスベクター(福島医大が開発)と順行性ウイルスベクターの両方に二重感染した脊髄固有ニューロン(Propriospinal neuron: PN)だけに特異的に遺伝子導入することに成功しました。これによって、DOXという薬物をサルに飲ませることで、この“間接経路”の神経伝達(シナプス伝達)だけを効果を強めた破傷風毒素(京都大学が開発)を使って特異的に止めることに成功しました。
二重遺伝子導入法を適用した結果、GFPを発現している脊髄固有ニューロン(PN)(“間接経路”)。
DOXを投与して“間接経路”の神経伝達を止めると、サルが手指をつかって筒の中のえさをつまむ運動ができなくなりました。つまり、“間接経路”が阻害されたことによって、手指の巧みな動きができなくなったと言えます。
1.特定の神経回路を標的にした遺伝子治療法開発へ期待
今回開発した二重遺伝子導入法は、霊長類や高等哺乳類の特定の神経回路に遺伝子導入することができる技術です。人間の脳神経系の疾患では、特定の神経回路の異常によって引き起こされる疾患も多く知られています。今回の研究成果によって、脳の複雑な神経回路の中でも特定の神経回路に対して、行動に影響を与えることができるほどにまで高い効率で遺伝子導入できる技術が開発されたことから、今後、こうした脳神経疾患の患者へのより副作用が少なく、効果的な遺伝子治療法の開発につながる研究成果といえます。
2.脊髄は単なる反射の経路という教科書的常識を覆す成果
教科書の常識では、脊髄は、脳からの電気信号を伝える通り道であり、せいぜい反射の経路としか考えられていませんでした。今回の研究成果により、脳から筋肉への信号の通り道の中でも、進化によって取り残された“間接経路”(脊髄固有ニューロン)が、手指の巧みな動きを生み出しコントロールしていることがわかりました。脊髄の神経回路も、精緻な運動を制御する高度な役割を担っていることを見つけた教科書を書き換える成果です。
3.高次脳機能解明の方法論に大きな突破口
ヒトを含む霊長類の脳は、1千億を超える神経細胞が複雑に絡み合う神経回路をつくり、高次脳機能を生み出しています。今回の手法を用いれば、こうした複雑な神経回路の中から特定の神経回路を選り分け、その機能を探ることができると期待できます。
4.脊髄損傷後のリハビリテーションに理論的基礎を与える成果
従来より、脊髄損傷が起きて、運動野から脊髄に至る直接経路が切れてしまうと運動能力の回復は困難とされていました。しかし、今回の結果から、進化的の過程で退化してしまったのではないかと考えられてきた間接経路をうまく活用することで、脊髄損傷の患者でも手指の器用な運動の機能回復を促進できる可能性があることがわかりました。このような新たなリハビリテーション法の開発や再生医療研究の発展が期待されます。
Genetic dissection of the circuit for hand dexterity in primates
Masaharu Kinoshita, Ryosuke Matsui, Shigeki Kato, Taku Hasegawa, Hironori Kasahara, Kaoru Isa, Akiya Watakabe, Tetsuo Yamamori, Yukio Nishimura, Bror Alstermark, Dai Watanabe, Kazuto Kobayashi, Tadashi Isa
英国科学誌Nature 6月17日電子版
<研究について>
自然科学研究機構 生理学研究所 認知行動発達研究部門
教授 伊佐 正 (いさ ただし)
特任助教 木下 正治 (きのした まさはる)
Tel:0564-55-7761 Fax:0564-55-7868
Email:tisa@nips.ac.jp (伊佐教授)
福島県立医大 医学部附属生体情報伝達研究所 生体機能研究部門
教授 小林 和人 (こばやし かずと)
助教 加藤 成樹 (かとう しげき)
Tel:024-547-1667 Fax:024-548-3936
Email:kazuto@fmu.ac.jp (小林教授)
京都大学 大学院生命科学研究科 認知情報学講座
大学院医学研究科 生体情報科学講座
教授 渡邉 大(わたなべ だい)
助教 松井 亮介 (まつい りょうすけ)
Tel: 075-753-4437 Fax: 075-753-4404
Email:dai@phy.med.kyoto-u.ac.jp
<広報に関すること>
自然科学研究機構 生理学研究所 広報展開推進室
准教授 小泉 周 (こいずみ あまね)
Tel:0564-55-7722 Fax:0564-55-7721
Email:pub-adm@nips.ac.jp
「脳科学研究戦略推進プログラム」事務局
大塩 立華
TEL:03-5282-5145/FAX:03-5282-5146
E-mail: oshio@nips.ac.jp
福島県立医科大学
企画財務課(広報担当)
橋本 孝幸
TEL: 024-547-1013
Email: h-taka@fmu.ac.jp
京都大学 渉外部 広報・社会連携推進室
掛長(広報企画掛) 東 年昭 (ひがし としあき)
TEL: 075-753-2071 FAX:075-753-2094
email:kohho52@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp
ヒトやサルの脳は、1千億を超える神経細胞が複雑に絡み合った神経回路をつくり、高次脳機能を生み出しています。たとえば、パーキンソン病などの神経疾患 の遺伝子治療を行う際には、こうした複雑な神経回路の中から特定の働きをしている神経回路を見つけ出し、それを標的にする必要がありますが、特定の神経回 路だけを標的にして遺伝子を導入することはこれまで困難でした。今回、京都大学・霊長類研究所の高田昌彦教授、自然科学研究機構・生理学研究所の南部 篤 教授、福島県立医科大学の小林和人教授の共同研究グループは、サルで特定の神経回路だけを“除去”できる遺伝子導入法の開発に世界で初めて成功しました。 この方法をパーキンソン病など、さまざまな運動疾患にかかわる脳部位である大脳基底核の神経細胞に適用したところ、特定の神経回路の除去に成功、その神経 回路の働きを明らかにしました。今後、ヒトの神経疾患の遺伝子治療にも応用できる技術です。この研究成果は、文部科学省・脳科学研究戦略推進プログラムの 共同研究プロジェクトによるもので、米国科学誌プロスワン(6月25日号電子版)に掲載されます。 |
研究グループは、細胞死を誘導する物質として知られるイムノトキシンの受容体であるヒトインターロイキンタイプ2受容体を発現する特殊なウイルスベクター(NeuRet-IL-2Rα-GFPウイルスベクター)を開発。このウイルスベクターに感染した神経細胞は、イムノトキシンと結合することによって細胞死を引き起こします。研究グループでは、まずこのウイルスベクターを大脳基底核の一部である視床下核に注入しました。次に、運動野(運動を制御する大脳皮質の領域)にイムノトキシンを注入することによって、運動野から大脳基底核に至る神経回路のうち“ハイパー直接路”と呼ばれる神経回路だけを選択的に除去することに成功しました。その結果、大脳皮質から大脳基底核に運動情報が入る際に、早いタイミングでみられる神経細胞の興奮活動が、このハイパー直接路を経由して起こることを発見しました。
高田教授と南部教授は、「今回の方法は、霊長類の高次脳機能の解明、さらにはさまざまな精神・神経疾患の霊長類モデルの開発やこれらの疾患を克服するための遺伝子治療研究など、脳科学研究に日本発の新展開を与えることが期待できます」と話しています。
本研究は、文部科学省脳科学研究戦略推進プログラム:課題C「先端的遺伝子導入・改変技術による脳科学研究のための独創的霊長類モデルの開発と応用」により実施されました。
1.霊長類で脳の特定の神経回路を“除去”する遺伝子導入法を開発しました。
2.パーキンソン病などにかかわる脳部位(大脳基底核)への適用に成功し、大脳皮質(運動野)から大脳基底核(視床下核)にいたる“ハイパー直接路”が、大脳基底核(淡層球内節)の神経細胞でみられる早いタイミングの興奮活動を引き起こしていることを発見しました。
領域A,B,Cに分布する3つの神経細胞がそれぞれ入力(刺激)をうけ、共通の1つの神経細胞に連絡し、そこから出力する神経回路の模式図。このような神経回路の神経連絡のつなぎ目(シナプス)の部分に、NeuRet-IL-2Rα-GFPウイルスベクターを注入すると(①)、これによって導入された遺伝子が神経線維を逆行性(神経伝達とは逆向き)に輸送され(②)、領域A,B,Cの神経細胞(細胞体)で、細胞死を誘導する物質として知られるイムノトキシンの受容体であるヒトインターロイキンタイプ2受容体が発現します(③)。この時、領域Cの神経細胞にだけイムノトキシンを作用させると(④)、領域Cの神経細胞だけを選択的に死滅させることができます。
図1の原理に基づいて、ウイルスベクターを大脳基底核(視床下核)に注入。さらにイムノトキシンを大脳皮質(運動野)に注入することによって、運動野から視床下核に至る神経回路(“ハイパー直接路“と呼ばれています)だけを選択的に“除去”することができます。その際、大脳基底核の神経回路の働きがどのように変化したかを、運動野の電気刺激に対する神経細胞の反応を淡層球内節(GPi)から記録して確かめます。
大脳皮質(運動野)にイムノトキシンを注入して、運動野から視床下核に至る神経回路(大脳基底核の“ハイパー直接路“)だけを選択的に“除去”すると、淡層球内節(GPi)の神経細胞でみられる運動野刺激に対する早いタイミングの興奮活動がなくなりました。
パーキンソン病などの運動疾患にかかわる大脳基底核の神経回路の模式図。大脳皮質(運動野)から大脳基底核に至る神経回路のうち“ハイパー直接路”と呼ばれる神経回路だけを選択的に除去すると、淡蒼球内節の神経細胞で早いタイミングの興奮活動だけがみられなくなったことから、この神経回路が早い興奮を引き起こす働きをしていることが明らかになりました。
Cx: 大脳皮質、GPe: 淡蒼球内節、GPi: 淡蒼球外節、SNr: 黒質網様部、STN: 視床下核、Str: 線条体、Th: 視床
パーキンソン病をはじめとする精神・神経疾患の遺伝子治療法の確立に期待
今回の遺伝子導入法を使えば、霊長類で特定の神経回路を除去できることから、パーキンソン病をはじめとした、特定の神経回路の活動異常によって起こるさまざまな精神・神経疾患の治療法に応用できる可能性があります。
mmunotoxin-Mediated Tract Targeting in the Primate Brain: Selective Elimination of the Cortico-Subthalamic “Hyperdirect” Pathway
Ken-ichi Inoue, Daisuke Koketsu, Shigeki Kato, Kazuto Kobayashi, Atsushi Nambu, Masahiko Takada
PLoS ONE(プロスワン) 6月25日号電子版
<研究について>
京都大学 霊長類研究所 分子生理研究部門 統合脳システム分野
教授 高田 昌彦(たかだ まさひこ)
特定助教 井上 謙一(いのうえ けんいち)
Tel:0568-63-0572 FAX:0568-63-0576
Email:takada@pri.kyoto-u.ac.jp(高田教授)
自然科学研究機構 生理学研究所 生体システム研究部門
教授 南部 篤(なんぶ あつし)
特任助教 纐纈 大輔(こうけつ だいすけ)
Tel:0564-55-7771 FAX:0564-55-7773
E-mail: nambu@nips.ac.jp(南部教授)
福島県立医科大学 医学部附属生体情報伝達研究所 生体機能研究部門
教授 小林 和人(こばやし かずと)
助教 加藤 成樹(かとう しげき)
Tel:024-547-1667 Fax:024-548-3936
Email:kazuto@fmu.ac.jp(小林教授)
<広報に関すること>
京都大学 渉外部 広報・社会連携推進室
掛長(広報企画掛) 東 年昭 (ひがし としあき)
TEL: 075-753-2071 FAX:075-753-2094
email:kohho52@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp
自然科学研究機構 生理学研究所 広報展開推進室
准教授 小泉 周 (こいずみ あまね)
Tel:0564-55-7722 Fax:0564-55-7721
Email:pub-adm@nips.ac.jp
福島県立医科大学
企画財務課(広報担当)
橋本 孝幸
TEL: 024-547-1013
Email: h-taka@fmu.ac.jp
文部科学省脳科学研究戦略プログラム事務局
大塩 立華(おおしお りつ)
Tel: 0564-55-7803 Fax:0564-55-7805
Email:srpbs@nips.ac.jp
生理学研究所・広報展開推進室では、日本学術振興会と共催で、ひらめき☆ときめきサインエンスの高校生体験学習会を開催します。
ヒトの脳や体は電気信号で動いていますが、この電気信号はとっても小さいので普段は感じることはできません。そこで簡易筋電位計測装置「マッスルセンサー2」(日本科学未来館と共同開発)を使用してこの電気信号を感知し、レゴブロックでつくったロボットアームを動かしてみましょう。
※参加費無料。使用したマッスルセンサー2は参加各校1台お持ち帰りいただけます。
記
日時: 8月27日 土曜日 12:30集合
会場: 自然科学研究機構 岡崎コンファレンスセンター
対象: 高校生20グループ(参加校1校で1人の、理科教員の引率をお願いします)
オンライン申し込み:http://www.nips.ac.jp/public/hiratoki
お申込み締め切り:7月6日(金)17:00まで
生理学研究所では、名古屋大学医学部と共同主催、文部科学省「脳科学研究戦略推進プログラム」との共催、愛知県の後援にて、市民講座「発達障がい その今と未来を考える」を開催いたします。参加無料、ただし、要事前申し込み(定員は300名)です。
(内容)
・自閉症スペクトラム障がいとは?
・原因は何?
・どう接したらいいの?
(日時・場所)
2012年9月16日 午後1時30分~4時
名古屋大学医学部病院 中央診療棟講堂
(対象)
発達障がいのある子どもの家族、福祉・教育関係者、医療関係者
※未就学児の入場はできません。
講演1
自閉症スペクトラム障がい(広汎性発達障がい)の診断:その現状と課題
講演者:名古屋大学大学院医学系研究科
親と子どもの心療学分野 講師
岡田 俊
講演2
自閉症スペクトラム障がいについてわかっていること 今後わかる必要があること
講演者:名古屋大学大学院医学系研究科
精神医学・親と子どもの心療学分野 教授
尾崎 紀夫
講演3
今、家族ができること、気をつけたいこと
家庭でできる幼児への対応について
講演者:自然各研究機構生理学研究所 研究員
宍戸 恵美子
討論
診断と対応、および福祉について
※司会:自然科学研究機構生理学研究所 生体情報研究系 神経シグナル研究部門
井本 敬二 教授
宍戸 恵美子 研究員
(申し込み方法など)
E-mail(nagoya@nips.ac.jp)で必要事項をご記入の上、お申込みください。
なお、E-mailがご使用できない場合に限り、FAXまたはTELでも受け付けます。
詳しくはチラシをご覧ください。
<申し込み多数のため、受付終了しました。ありがとうございました。>
「見えている」という意識をしなくても、脳の中には目(網膜)からの視覚情報が脳に無意識に送り込まれています。これは、脳の視覚野という部位が損傷して、見えてないはずなのに無意識に見えているという現象(盲視)があることから分かってきました。これまで、視覚野の脳血管障害患者でも“見えている”と意識していないのに障害物をよけて歩いたりすることができるなどの不思議な現象が知られていましたが、これが本当に盲視なのかは証明されていませんでした。今回、自然科学研究機構・生理学研究所の吉田正俊 助教・伊佐正 教授らの国際共同研究チームは、脳の視覚野に障害をもったサルの盲視現象は、実験室での特定の条件のもとで起こるだけではなく、日常生活シーンの中でも、起きていることを証明しました。米国科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology, 6月28日電子版)に掲載されます。 |
研究チームはこれまで、視覚野に障害のあるサルでも、「見えている」と意識せずに視覚刺激のある場所を言い当てることができる“盲視”を証明してきました。今回、研究チームは、実験室の特殊な視覚刺激条件ではなく、日常生活のシーンの中でも、そうした盲視現象が生じるかどうかを、日常生活シーンの映像を利用して検証。とくに、見えないはずの視野の中でも、「動き」「明るさ」「色」で目立つ部分には目を向けることが出来ることを明らかにしました。つまり、目の動きをみるだけで、見えないながらも、無意識にどこに注意をむけているのか分かることがわかりました。
吉田助教は、「脳血管障害による視覚障害患者(脳梗塞後の同名半盲など)において、盲視の能力が日常生活でも使える可能性を明らかにしたことで、視覚障害患者でもリハビリなどによって視覚機能回復を行う意義と可能性を示したといえます。また、“ムービークリップ視聴中の眼球運動の測定”という検査方法によって、どの程度(無意識に)見えているのか検査することが可能ということもわかりました」と話しています。
ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム (2005-2008)による三ヶ国での国際共同研究(日本・生理研、アメリカ・南カリフォルニア大学、カナダ・クイーンズ大学)および、文部科学省科学研究費補助金、そして日本学術振興会による補助をうけて行われました。
1.脳血管障害(視覚野障害)による視覚障害サルの“見えてないのに無意識に見えている”という盲視現象は、実験室の特殊な視覚刺激条件だけでなく日常生活シーンの中でも生じることがわかりました。
2.見えないはずの視野の中でも、「動き」「明るさ」「色」で目立つ部分には目を向けることが出来ることを明らかにしました。
3.目の動きを測定することによって、“無意識に見えている”ことを検証することができることが分かりました。
盲視とは「見えていると意識できないのに見えている」という現象と定義されます。1973年、視覚野に障害を持った患者であるD.B.が、その見えないはずの視野にあるモノの位置を当てることができることに医師は気付きました。例えば、スクリーンに光点を点灯させて当てずっぽうでいいから位置を当てるように指示すると、D.B.はそれが見えないにもかかわらず、光点を正しく指差すことができました。また、棒が縦か横かを当てるテストでもほとんど間違いがなく答えることができました。
このように本人は見えていると意識できていないにもかかわらず、眼球運動など一部の視覚機能は損傷から回復させることができます。この現象を「盲視」と呼びます(詳細は、日本神経回路学会 オータムスクール ASCONE2007 吉田 正俊 講義概要「盲視(blindsight)の神経機構」(http://www.nips.ac.jp/~myoshi/blindsight.html http://www.nips.ac.jp/~myoshi/blindsight.html)を参照)。
通常、眼の「網膜」で見た情報は、「視床」を経由して、「視覚野」に送られ、ここで初めて「見ている」として意識されます。しかし、伊佐教授ら研究チームのこれまでの研究成果から、脳梗塞などで「視覚野」が障害を受けた場合には、中脳の「上丘」を介して脳の中に無意識に情報が伝わっていくことが分かってきました。
視覚野の障害による視覚障害のサルに、日常生活シーンの映像を見せ、そのときの目の動きを測定。日常生活シーンの映像から、「動き」「明るさ」「色(赤―緑)」「色(青―黄)」「傾き」に関わる視覚情報の特徴を分析し、その映像を見ているときの視覚障害サルの目の動きと比較しました。
正常のサルと、視覚障害の盲視のサルの目の動きを比較したところ、盲視のサルでも、「動き」「明るさ」「色(赤―緑)」の画像特徴を認識して、そこに目を向けることがわかりました。一方で、「傾き」については、盲視のサルでは、注視できないこともわかりました。
視覚障害の盲視のサルでも、視覚情報の中から「動き」「明るさ」「色」といった画像情報の特徴をとらえ、目を向けることができることがわかりました。つまり、“見えていないのに無意識に見えている”ことがわかりました。
脳血管障害による視覚障害患者の視覚回復とそのリハビリテーション法開発へ道
脳梗塞などの脳血管障害による視覚野の損傷で視野障害となった患者が多くいらっしゃいます。これまでにも研究チームが明らかにしてきたように、実際には、意識していなくても眼で見た情報は損傷を受けた視覚野をバイパスされ、脳に伝わることが今回の実験でも改めて証明されました。とくに、「動き」「色」「明るさ」といった情報は、脳に無意識に伝わり、目の動きを促すことがわかりました。こうした無意識の視覚を代償的なものとして利用して、眼を動かすリハビリテーションの訓練を行うこともできると考えられます。たとえば、意識にはのぼらない視覚機能を、「動き」「色」「明るさ」に対する目の動きをつかって評価することで、リハビリテーションの効果判定を行うことができるかもしれません。
Residual attention guidance in blindsight monkeys watching complex natural scenes
Masatoshi Yoshida, Laurent Itti, David J. Berg, Takuro Ikeda, Rikako Kato, Kana Takaura, Brian J. White, Douglas P. Munoz & Tadashi Isa
Current Biology, 6月28日号電子版
<研究について>
自然然科学研究機構 生理学研究所
助教 吉田 正俊 (ヨシダ マサトシ)
Tel:0564-55-7764 FAX:0564-55-7766
E-mail:myoshi@nips.ac.jp
<広報に関すること>
自然科学研究機構 生理学研究所 広報展開推進室 准教授
小泉 周 (コイズミ アマネ)
TEL:0564-55-7723 FAX:0564-55-7721
E-mail:pub-adm@nips.ac.jp
私たちの体は、200種にもおよぶ細胞が多数集まって作られています。互いの細胞は、情報や物質をやりとりしながら協調することで生命を維持していますが、細胞同士が協調して働く活動は複雑で、生きたまま特定の細胞の働きだけを解析するのは容易なことではありません。今回、自然科学研究機構・生理学研究所の松井 広 (マツイ・コウ)助教、田中 謙二 (タナカ・ケンジ)助教(現・慶應義塾大学医学部准教授)らの研究チームは、マウスの特定の種類の細胞だけに「光を感じて反応するタンパク質(光感受性分子)」を、安定かつ多量に遺伝子発現させる遺伝子改変マウスを開発しました。このように操作した遺伝子改変マウスでは、光刺激の有無によって、生きたまま特定の細胞種の活動を光で制御(光操作)することが可能で、たとえば「脳における特定の細胞の活動」と行動との関係などを詳しく解析できるようになると期待されます。今回の研究成果は、セル・レポート(Cell Reports、7月19日電子版)に掲載されました。 |
田中助教らは、緑藻類がもつチャネロドプシン2(channelrhodopsin-2, ChR2)という光感受性タンパク質の遺伝子を、特定の細胞種にのみ効率よく発現させるシステム(“KENGE-tetシステム”)を確立しました。これによって、体の中の特定の細胞種を狙い、その活動を生きたまま光によって制御(光操作)することが可能になります。
“KENGE-tetシステム”では、具体的には2種類の遺伝子改変マウスを用います。この2種類の遺伝子改変マウスの第1のマウスと第2のマウスを対象に、次のような二段階の操作を行いました。まず、第1のマウスの「目的とする細胞種だけで発現する遺伝子」の制御部位(プロモーター)に、tTA(テトラサイクリン制御性トランス活性化因子)の遺伝子を組み込みました(tTAマウス)。次に、第2のマウスのβ-actin遺伝子部位に「ChR2の発現を誘導する遺伝子(tetO遺伝子カセット)」を組み込みました(tetO-ChR2マウス)。β-actin遺伝子座に導入する理由は、β-actin分子がどのような細胞においても多く発現される分子だからです。このような2種の遺伝子改変マウスをかけあわせることによって、目的の細胞種でのみChR2を安定かつ多量に発現させることができました。このとき、第1のマウスにおいてtTAを組み込む遺伝子の種類を変えると、ChR2が発現する細胞種が変わることも確かめました。
さらに研究チームは、この2段階の光感受性分子発現システム(“KENGE-tetシステム”)を利用し、脳の神経細胞やグリア細胞においてChR2を発現するマウスを、何系統も作り出すことに成功しました。これらのマウスの脳に光ファイバーによる光刺激を与えると、神経細胞やグリア細胞をピンポイントで活性化させることができ、その細胞の状態と行動との関連を詳細に解析するツールとして利用できることを明らかにしました。
今回の成果は、神経科学だけでなく、医学や生物学の幅広い分野で応用できると期待されます。なお、開発された遺伝子操作マウスは、理化学研究所 バイオリソースセンターより入手することができます。
武田科学振興財団および、文部科学省科学研究費補助金、日本学術振興会による補助をうけて行われました。
マウスの細胞に「光を感知して反応するタンパク質(光感受性分子)の遺伝子」を導入する試みは、世界各地で行われていました。その多くは、「無毒なウイルスを使って、光感受性遺伝子を細胞に導入する」というもので、コストは安いのですが、目的の細胞に安定かつ大量に発現させるのが難しいという問題がありました。遺伝子の発現量にばらつきがあると、同じ光刺激を与えても得られる結果が変わってしまい、「ちゃんと光刺激できているのか?」「何による効果を測っているのか?」がわからなくなってしまいます。
その点、今回開発した2種類の遺伝子改変マウスを利用した“KENGE-tetシステム”では、ねらった細胞種にのみ、光感受性分子ChR2を安定かつ大量に遺伝子を発現させることができます。たとえば、グリア細胞にChR2を発現させたマウスの頭部に光をあてると、狙ったグリア細胞でのみ「細胞膜に陽イオンを通すチャネル」が開き、内部に電流が流れ込んで細胞が活性化されます。このように、頭蓋骨を通して、脳を全く傷つけることなく、特定の神経細胞やグリア細胞の活動を自在に操り、時系列を追って観察できる技術は、きわめて画期的だといえます。
2種類の遺伝子改変マウス(tTAマウスと、tetO-ChR2マウス)を使って、特定の細胞に光感受性分子(ChR2)を発現させる”KENGE-tetシステム”を開発しました。さまざまなtTAマウスとtetO-ChR2マウスを掛け合わせることによって、特定の細胞に光感受性分子を発現させ、光操作できるようにすることができます。tTAを組み込む遺伝子の種類を変えると、ChR2が発現する細胞種が変わることも確かめました。たとえば、ChR2を脳の海馬と呼ばれる部分に発現するマウスを作ると、脳の中に埋めこんだ光ファイバーによって、光によってそのマウスの行動を活発にすることができました。
生きたまま“光”で特定の細胞の活動を操作(光操作)
たとえば、脳の研究の中心は、これまで神経細胞の働きを調べることでした。今回、研究チームは、脳をつくる神経細胞以外の細胞であるグリア細胞を主な標的細胞にして解析を進めました。グリア細胞は、脳容積の多くを占め、興奮状態が変化することなどが知られています。ただし、その形状は複雑で、培養が困難なことなどから、分子レベルの動態や脳機能に与える影響などについてはほとんど解明されていません。今回のKENGE-tetシステムを用いれば、これまで脇役だったグリア細胞と脳や心の機能との関連が明らかにできると期待されます。
生きたままの状態で細胞レベルの活動を変えられるKENGE-tetシステムは、脳科学だけでなく、他の生物学領域や医学分野において広く応用可能です。今後、ChR2以外のさまざまな機能タンパク質を発現するマウスを作り出し、レパートリーを増やしていけば、新薬候補の効果を試す際の網羅的なスクリーニングなどにも利用できると考えられます。
Expanding the repertoire of optogenetically targeted cells with an enhanced gene expression system
Kenji F. Tanaka, Ko Matsui, Takuya Sasaki, Hiromi Sano, Shouta Sugio, Kai Fan, René Hen, Junichi Nakai, Yuchio Yanagawa, Hidetoshi Hasuwa, Masaru Okabe, Karl Deisseroth, Kazuhiro Ikenaka, Akihiro Yamanaka
Cell Reports, 7月19日電子版
<研究について>
自然然科学研究機構 生理学研究所
助教 松井 広(マツイ コウ)
Tel:0564-59-5279 Fax:0564-59-5275
E-mail:matsui@nips.ac.jp
自然科学研究機構 生理学研究所
助教 田中 謙二(タナカ ケンジ)
(現 慶應義塾大学医学部 准教授)
Tel:03-5363-3934 FAX:03-5379-0187
E-mail:kftanaka@a8.keio.jp
<広報に関すること>
自然科学研究機構 生理学研究所 広報展開推進室 准教授
小泉 周 (コイズミ アマネ)
TEL:0564-55-7722 FAX:0564-55-7721
E-mail:pub-adm@nips.ac.jp
人は、物をみただけで、その“質感”を判別しています。なかでも、「キラキラ」や「ピカピカ」「テカテカ」といった物の“光沢”は、見ただけで脳の中で瞬時に判断していますが、その脳内での仕組みは分かっていませんでした。今回、自然科学研究機構生理学研究所の西尾亜希子研究員、小松英彦教授らの研究グループは、霊長類動物の脳の中に、“光沢”を見分ける特別な神経細胞群があることを世界で初めて発見しました。この脳神経細胞は、物の形や照明によらず光沢を見分けられることができます。本研究成果は、米国神経科学会誌(ザ・ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス、2012年8月1日号電子版)に掲載されました。
研究グループは、同じ形で33種類の光沢をもつ物体をコンピューターグラフィックで作成。この33種類の物体を、ニホンザルに見せたときの脳の活動を記録しました。その結果から、脳の大脳腹側高次視覚野の下側頭葉と呼ばれる部分に、光沢に応じて反応する神経細胞群があることをつきとめました。神経細胞群の中の細胞は役割分担して、鏡面反射や拡散反射などの度合いに応じて、「鋭く輝くもの」、「ぼやけた光沢をもつ物」、「艶のないもの」、といった物の光沢の違いを判別していました。
小松教授は、「世界ではじめて、霊長類の脳の大脳腹側高次視覚野にある特殊な脳神経細胞が、“光沢”を見分ける機能を持っていることを明らかにしました。“光沢”は物の質を表す重要な視覚情報で、物の価値判断にも影響を与えます。おそらく進化の過程で獲得された脳の機能だと考えられ、金や銀の美しい輝きを感じる時にも、こうした“光沢”を見分ける脳の仕組みが働いていると考えられます」と話しています。
本研究は文部科学省科学研究費補助金の補助を受けて行われました。
1.霊長類動物の脳の大脳腹側高次視覚野の下側頭葉に“光沢”に反応する神経細胞群があることを発見しました。
2.鏡面反射や拡散反射の度合いに応じて、「鋭く輝くもの」、「ぼやけた光沢をもつ物」、「艶のないもの」、といった物の光沢の違いを判別していました。
同じ形ながら異なる33種類の光沢をもつ物をコンピューターグラフィックで作り出しました。この33種類の物を見せた時のニホンザルの脳の反応を記録しました。
“光沢”を判別する神経細胞の電気応答の一例。この神経細胞は、形によらず、「鋭い反射を持つ、つるつるした表面の物体(鋭く輝くもの)」の画像に強く反応しました。このように特定の光沢を見分けて反応する細胞が多数見つかりました。
記録された“光沢”を判別する神経細胞群の活動を分析して、これらの神経細胞が、どのように光沢を見分けているかを分類した図。この図では、左の方に「鋭く輝くもの」、右下は「ぼやけた光沢をもつもの」、右上は「艶のないもの」が集まっており、これらの神経細胞の活動がさまざまな光沢を系統的に表現していることが分かります。
入射光に対する拡散反射、鏡面反射、ラフネス(広がり)という3種類の反射パラメーターの組み合わせによって、モノの“光沢”を変化させることができます。
霊長類の脳の“光沢”を見分ける優れた機能の解明へ
世界ではじめて、霊長類の脳の大脳腹側高次視覚野にある特殊な脳神経細胞群で、“光沢”を見分けるという優れた機能を持っていることを明らかにしました。将来的には、こうした生体の優れた質感認識機能を模擬した自動的・効率的な質感分類・同定システムへの応用、濡れているなどの表面状態を瞬時に察知して適応的に動作・行動するロボットシステムへの応用、その他、様々な分野(アート、エンターテイメント、工業デザイン、広告、デジタルアーカイブなどの)において、豊かな質感の生成・再現を実現するための技術の開発などへ繋がると期待されます。
脳の大脳腹側高次視覚野の下側頭葉には、「鋭く輝くもの」、「ぼやけた光沢をもつもの」、「艶のないもの」など光沢に応じて反応する神経細胞群があることを発見しました。今回発見された“光沢”を見分ける仕組みをつかって、この3つの物体の光沢の違いを判別していると考えられます。
Neural selectivity and representation of gloss in the monkey inferior temporal cortex
Akiko Nishio, Naokazu Goda, Hidehiko Komatsu
ザ・ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス 8月1日号電子版
<研究について>
自然然科学研究機構 生理学研究所
教授 小松 英彦(コマツ ヒデヒコ)
研究員 西尾亜希子(ニシオ アキコ)
Tel:0564-55-7861 / 7862 Fax:0564-55-7865
E-mail:komatsu@nips.ac.jp
<広報に関すること>
自然科学研究機構 生理学研究所 広報展開推進室 准教授
小泉 周 (コイズミ アマネ)
TEL 0564-55-7722、FAX 0564-55-7721
pub-adm@nips.ac.jp
痛みは動物が損傷を受ける可能性のある刺激を感じるために必要な感覚であり、生存に欠かせないものです。ヒトなどの哺乳類ではワサビやシナモンなどの香辛料や排気ガスや煙草の煙に含まれる様々な刺激性の化学物質のセンサーとしてTRPA1チャネルが働いています。TRPA1チャネルの機能が脊椎動物種間でどの程度多様であるのか、また、どういった進化過程を経てきたのかを調べるために、生理学研究所(岡崎統合バイオサイエンスセンター)の齋藤茂特任助教と富永真琴教授は、鳥取大学の太田利男教授との共同研究により、両生類のニシツメガエルと爬虫類のグリーンアノールトカゲのTRPA1チャネル遺伝子をクローニングしてその機能を調べました。
その結果、ニシツメガエルとグリーンアノールトカゲのTRPA1チャネルは哺乳類TRPA1チャネルを活性化する刺激性の化学物質により活性化され、化学物質に対する感受性は保存されていることが分かりました。哺乳類ではTRPA1チャネルは低温で活性化されるという報告があることから(温度刺激により活性化されないという報告もある)、温度感受性についても検討したところ、ニシツメガエルとグリーンアノールトカゲのTRPA1チャネルは低温ではなく、高温の刺激により活性化されることが分かりました(図1A)。また、ニシツメガエルにおいてTRPA1チャネルは別の高温のセンサーであるTRPV1チャネルと同じ感覚神経細胞に発現していることが分かり(図1B)、両者が協調的に高温を感じるために働いていることが分かりました。
昆虫においてもTRPA1チャネルは刺激性の化学物質および高温のセンサーとして働いていることからTRPA1チャネルは動物の進化過程の初期にこのような機能を獲得し、その後、脊椎動物の祖先種においても維持されていたと考えられます(図2)。ところが、ゼブラフィッシュで温度感受性を喪失する、また、ヘビのピット器官(赤外線センサー)で新たな生理機能を獲得する、などTRPA1チャネルの機能は脊椎動物種間で多様化しています。これは、TRPV1チャネルが脊椎動物の祖先種で新たな高温センサーとして獲得されTRPA1チャネルと同じ感覚神経細胞に発現するようになったことから、TRPA1チャネルが必ずしも高温センサーとしての機能を維持しなくても良くなりそれぞれの種で機能を変えることができるようになったためと考えられます。
また、哺乳類のTRPA1チャネル阻害剤がニシツメガエルとグリーンアノールのTRPA1チャネルには作用しないことが分かりました。このようなTRPA1チャネルの種間多様性は阻害剤が作用する際の分子メカニズムの解明に役立つと期待されます。
Analysis of Transient Receptor Potential Ankyrin 1 (TRPA1) in Frogs and Lizards Illuminates Both Nociceptive Heat and Chemical Sensitivities and Coexpression with TRP vanilloid 1 (TRPV1) in Ancestral Vertebrates.
Shigeru Saito, Kazumasa Nakatsuka, Kenji Takahashi, Naomi Fukuta, Toshiaki Imagawa, Toshio Ohta, and Makoto Tominaga
The Journal of Biological Chemistry 287 (2012) 30743-30754
(A)アフリカツメガエル卵母細胞にニシツメガエルTRPA1チャネルを人工的に発現させて、各種の刺激に対するイオン電流を測定しました。ニシツメガエルTRPA1は低温では活性化されませんでしたが、高温とシナモンに含まれるシンナムアルデヒド(CA)により活性化されました。(B)ニシツメガエルの感覚神経である後根神経節(DRG)神経細胞の応答。高温、シンナムアルデヒドおよびTRPV1チャネルを活性化するカプサイシン(Cap)により活性化されました。これはTRPA1とTRPV1チャネルが同じDRG神経細胞で働いていることを示しています。
ATPは細胞内エネルギー源としてのみならず、細胞外シグナルとしての役割も果たしている。細胞は種々の刺激やストレスを受けて細胞外へとATPを放出して、細胞膜外表面に露出した受容体を介して、その細胞自らを(オートクリン的に)刺激するか、あるいは周辺の細胞を(パラクリン的に)刺激してシグナル伝達する。この細胞からのATP放出は、ATPを含んだ細胞内小胞膜の細胞膜への融合(エキソサイトーシス)によって行われるか、あるいは細胞質内のATPを細胞膜のチャネル蛋白質のポアを透過させて行われる。非神経細胞で主として見られる後者に関与するATP放出性チャネルとしては、通常は2細胞間でギャップジャンクションを形成するコネキシン(Cx)が単一細胞膜上で形成するヘミチャネルや、パネキシン(Px)が形成するヘミチャネルや、巨大単一チャネルコンダクタンス(即ち大きなポア)を持つマキシアニオンチャネル(Maxi-Cl)が知られている。Maxi-Clの分子実体は未同定であるので、最近CxやPxがその候補として注目されていた。
今回のIslam外国人研究員らの論文は、線維芽L929細胞(通称L細胞)において、次のような結果を世界で初めて報告しました。①細胞膨張したときに見られるATP放出には、エキソサイトーシスや本細胞に発現するCx43やPx2は関与せず、Maxi-ClとPx1の両方が独立した別個の分子として並列的に関与する。②放出されたATPは細胞が膨張後に元の大きさに戻るための容積調節(Regulatory Volume Decrease: RVD)に不可欠であり、この細胞においてこの役割を果たすのはPx1から放出されたATPではなく、Maxi-Clから放出されたATPの方である。即ち、RVDを実現する装置の近傍にあるのは、Px1ではなく、Maxi-Clであるものと考えられる(図参照)。③Maxi-ClはPx1、Px2、Cx43とは別個の分子である。
本論文を掲載した米国生理学雑誌2012年11月1日号は、本論文成果を注目すべきものとして同号のEditorial Focus記事(下記)でトピックス紹介し、マキシアニオンチャネルの分子同定の重要性を指摘しています: Dubyak GR (2012) Function without form: An ongoing search for maxi-anion channel proteins. Am J Physiol Cell Physiol 303: C913-C915 (doi:10.1152/ajpcell.00285.2012)
Islam MR, Uramoto H, Okada T, Sabirov RZ & Okada Y (2012) Maxi-anion channel and pannexin 1 hemichannel constitute separate pathways for swelling-induced ATP release in murine L929 fibrosarcoma cells. Am J Physiol Cell Physiol 303: C924-C935 (doi:10.1152/ajpcell.00459.2011)
「目と目で通じ合う」とよく言われるように、視線を介した他者とのコミュニケーションは、人と人が円滑な社会生活をおくる上で非常に重要です。今回、自然科学研究機構生理学研究所の定藤 規弘 教授・田邊 宏樹 助教(現名古屋大学 准教授)らと福井大学子どものこころの発達研究センター(福井大学医学部精神医学)小坂 浩隆 准教授らの共同研究グループは、金沢大学と共同で、成人の健常者と高機能自閉症者(ASD)を対象に、2人の脳活動を2台の機能的磁気共鳴断層画像装置(fMRI)によって同時計測することにより、目と目をあわせて同じものに注意を向ける “共同注意”の際の脳の活動について調べました。健常者ペアでは同調した脳活動がみられるのに対して、高機能自閉症者と健常者のペアではみられませんでした。文部科学省・脳科学研究戦略推進プログラムの一環として、生理学研究所(課題D)と福井大学(課題F)の共同研究として行われた研究成果です。本研究成果は、欧州電子版科学誌“Frontiers in Human Neuroscience”(2012年9月10日電子速報版)に掲載されました。 |
今回の研究では、定藤教授が福井大学に構築した簡易型の二者のfMRI同時計測システム(Dual functional MRI)を利用し、目と目で見つめ合う2人から同時に脳活動を記録しました。健常人と高機能自閉症者から2名でペアをつくり、その組み合わせによって比較しました。お互いに目を見つめ合い、一方が目配せによって自分が注意を向けている場所を相手に伝え、両者が同じ場所に共同で目線(注意)を向ける(共同注意)時の脳活動をリアルタイムで記録しました。健常人同士のペアでは、“共同注意”時に、脳の右前頭前野(右下前頭回)の脳活動の同調がみられました(「目と目で通じあう」)。高機能自閉症者と健常者のペアでは、そうした脳活動の同調は見られませんでした(「目と目で通じあうのが苦手」)。また、高機能自閉症者では相手の目を見て反応する際に脳の視覚野の活動の低下が見られたのに対し、健常人では高機能自閉症者が相手だと、むしろ視覚野と右下前頭回の脳活動の上昇が見られました。
定藤教授は、「高機能自閉症者と健常人がリアルタイムでコミュニケーションしている最中のfMRIによる脳活動の同時計測実験はこれが世界初です。高機能自閉症者は一般に視線を介したコミュニケーションが苦手であると言われていますが、脳活動からもそれを支持する結果を得ることができました。このfMRI同時計測システムを用いれば、高機能自閉症者との違う形のコミュニケーションの在り方を模索出来るのではないかと考えています。」と話しています。
文部科学省・脳科学研究戦略プログラム(課題D、F)にもとづく、福井大学との共同研究による研究成果です。
1.世界で初めて、「目と目で通じあう」ときの脳活動を、二台のMRIを使い、健常人と高機能自閉症者で同時にリアルタイム記録しました。
2.健常人同士のペアでは、“共同注意”時に、脳の右前頭前野(右下前頭回)の脳活動の同調がみられました(「目と目で通じあう」)。高機能自閉症者と健常者のペアでは、そうした脳活動の同調は見られませんでした(「目と目で通じあうのが苦手」)。
3.高機能自閉症者では相手の目を見て反応する際に脳の視覚野の活動の低下が見られたのに対し、健常人では高機能自閉症者が相手だと、むしろ視覚野と右下前頭回の脳活動の上昇が見られました。
定藤教授が福井大学に構築した簡易型の二者のfMRI同時計測システム(Dual functional MRI)を利用し、目と目で通じあう2人から同時に脳活動を記録しました(上図は、生理学研究所に設置されているDual fMRIシステムの写真)。健常人と高機能自閉症者から2名でペアをつくり、お互いに目を見つめ合い、一方が目配せによって自分が注意を向けている場所を相手に伝え、両者が同じ場所に共同で目線(注意)を向ける(共同注意)時の脳活動をリアルタイムで記録しました(下図は実験イメージ)。
健常人同士のペアでは、“共同注意”時に、脳の右前頭前野(右下前頭回)の脳活動の同調がみられました(「目と目で通じあう」)。高機能自閉症者と健常者のペアでは、そうした脳活動の同調は見られませんでした(「目と目で通じあうのが苦手」)。また、高機能自閉症者では相手の目を見て反応する際に脳の視覚野の活動の低下が見られ(上図左)、一方健常人では高機能自閉症者が相手だと、むしろ視覚野と右下前頭回の脳活動の上昇が見られました(上図中央)。
「目と目で通じ合う」時の脳活動 - 健常人と高機能自閉症者の違いを解明
高機能自閉症者と健常人がリアルタイムでコミュニケーションしている最中のfMRIによる脳活動の同時計測実験はこれが世界初です。高機能自閉症者は一般に視線を介したコミュニケーションが苦手であると言われていますが、脳活動からもそれを支持する結果を得ることができました。このfMRI同時計測システムを用いれば、高機能自閉症者との違う形のコミュニケーションの在り方を模索出来るのではないかと考えています。
Hard to “tune in”: neural mechanisms of live face-to-face interaction with high-functioning autistic spectrum disorder
Hiroki C. Tanabe*, Hirotaka Kosaka*, Daisuke N. Saito, Takahiko Koike, Masamichi J. Hayashi, Keise Izuma, Hidetsugu Komeda, Makoto Ishitobi, Masao Omori, Toshio Munesue, Hidehiko Okazawa, Yuji Wada, Norihiro Sadato
欧州科学誌 Frontiers in Human Neuroscience,
電子速報版 2012年9月10日掲載
doi:10.3389/fnhum.2012.00268
<研究について>
自然科学研究機構 生理学研究所 心理生理学部門
教授 定藤 規弘(さだとう のりひろ)
助教 田邊 宏樹(たなべ ひろき)(現・名古屋大学 准教授)
定藤研究室
TEL: 0564-55-7842 FAX: 0564-55-7843
e-mail:sadato@nips.ac.jp
〒910-1193 福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23-3
福井大学 子どものこころの発達研究センター こころの発達開拓部門
福井大学 医学部精神医学
特命准教授 小坂 浩隆 (こさか ひろたか)
TEL 0776-61-8363 FAX 0776-61-8136
e-mail: hirotaka@u-fukui.ac.jp
<広報に関すること>
自然科学研究機構 生理学研究所 広報展開推進室
准教授 小泉 周 (こいずみ あまね)
Tel:0564-55-7722 Fax:0564-55-7721
Email:pub-adm@nips.ac.jp
福井大学総合戦略部門広報室
古市 康博(ふるいち やすひろ)
TEL:0776-27-9733 FAX:0776-27-8518
e-mail:sskoho-k@ad.u-fukui.ac.jp
「脳科学研究戦略推進プログラム」事務局
大塩 立華
TEL:03-5282-5145/FAX:03-5282-5146
E-mail: oshio@nips.ac.jp
心臓の筋肉細胞(心筋細胞)表面の細胞膜には、CFTRイオンチャネル(嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子)と呼ばれる塩素イオンの出入り口となるタンパク質(イオンチャネル)があります。このCFTRイオンチャネルは、心筋細胞の電気活動や、心筋細胞の大きさの調節にかかわっていることが知られていました。今回、自然科学研究機構生理学研究所の岡田泰伸(オカダ ヤスノブ)所長らと仁愛大学の浦本 裕美(ウラモト ヒロミ)講師の研究グループは、心筋梗塞発症直後に、このCFTRイオンチャネルを活性化させると、心筋梗塞の進行を抑えることができることを、マウスをつかった実験によって明らかにしました。国際誌Cell Physiol Biochemの9月20日号(電子版)に掲載されました。 |
今回、研究グループは、マウスの心臓の左冠状動脈の虚血・血流再開(再灌流)に伴う心筋梗塞発症時に、CFTRイオンチャネルがどのような働きをするのかを確かめました。心筋梗塞発症直後にCFTRイオンチャネルを薬物で活性化させると、心筋の壊死の進行を抑えることができることがわかりました。CFTRイオンチャネルを持たない遺伝子改変マウスでは心筋傷害は悪化し、CFTR活性化剤投与によっても救済も改善もされないことがわかりました。つまり、CFTRイオンチャネルを活性化させられれば、心筋梗塞の進行を抑えられることがわかりました。
岡田泰伸所長は「心筋梗塞発症直後にCFTRイオンチャネルを活性化させることで、細胞から塩素イオンが放出され、心筋細胞が膨らんで死んでしまうことを抑えることができるものと考えられます。CFTRイオンチャネルを活性化させる薬剤を投与すれば、心筋梗塞の進行を抑制できると考えられます」と話しています。
本研究は文部科学省科学研究費補助金の補助を受けて行われました。
1. 心筋梗塞発症直後の血流再開(再灌流)時に、心筋細胞のCFTRイオンチャネルを活性化させると、心筋壊死を抑制できることがわかりました。
2. CFTRイオンチャネルの遺伝子改変ノックアウトマウスでは、CFTRイオンチャネルを活性化させる薬剤を投与しても心筋壊死は抑制できませんでした。
3. 心筋梗塞時の細胞破裂性(ネクローシス性)心筋細胞死は、CFTRイオンチャネルの活性化によって防御・救済されることがわかりました。
マウスの心臓の左冠状動脈の虚血と再灌流によって心筋梗塞を発症させたとき、心筋細胞の壊死の様子。CFTRイオンチャネルを活性化させる薬剤を投与すると、心筋細胞が死んでいるところ(TTC染色で白色になっているところ)が大幅にみられなくなっています。
新しい心筋梗塞治療法へ期待
心筋梗塞発症の際、実際に心筋細胞が死にはじめるのは、一時的に血のめぐりが遮断された(虚血)後に、血のめぐりが再開(再灌流)してしばらくしてからのことです。再灌流直後は、心筋梗塞患者に治療を施すことができ、しかも薬物が病巣に到達しうるタイミングでもあるので、本研究成果は心筋梗塞に対する新しい治療法が開発される可能性を開くものと考えられます。
Hiromi Uramoto, Toshiaki Okada & Yasunobu Okada (2012) Protective role of cardiac CFTR activation upon early reperfusion against myocardial infarction.
国際誌 Cell Physiol Biochem 30: 1023-1038
<研究に関すること>
岡田 泰伸 (オカダ ヤスノブ)
自然科学研究機構 生理学研究所 所長
TEL 0564-59-5881 FAX 0564-59-5883
email: okada@nips.ac.jp
<広報に関すること>
小泉 周 (コイズミ アマネ)
自然科学研究機構 生理学研究所 広報展開推進室 准教授
TEL 0564-55-7722 FAX 0564-55-7721
E-mail: pub-adm@nips.ac.jp
心臓の筋肉細胞(心筋細胞)にはCFTRと呼ばれるアニオンチャネルが発現しており、細胞外シグナル(アドレナリン、アデノシン、ATP)受容体刺激による細胞内蛋白キナーゼA/Cの活性化によって開口して、心筋細胞の電気活動や容積調節や虚血プレコンディショニングに関与することが知られている。
今回、マウスの左冠状動脈を結紮・再開放(虚血・再灌流)してもたらされる心筋梗塞(心筋壊死)に伴い、①心室筋内のCFTR蛋白質の発現は減少せずに、むしろ増大すること、②心筋傷害はCFTR活性化をもたらす各種薬剤を再灌流開始10分以内に投与することによって救済されること、③逆に心筋傷害はCFTR阻害剤の投与によっては増悪すること、④CFTRノックアウトマウスでは心筋傷害は増悪し、CFTR活性化剤投与によって救済も改善もされないことを明らかにした。更には、単離培養心室筋細胞を用いた虚血・再灌流モデル実験においても、上記①、②、③は再現され、加えて⑤この傷害の原因はアポトーシス死ではなくネクローシス死によること、⑥その傷害はCFTR遺伝子の強制発現によって救済され、CFTR遺伝子ノックダウンによって増悪すること、等を明らかにした。これらの結果は心筋梗塞時のネクローシス性心筋細胞死は、再灌流時のCFTR活性化によって防御・救済されることを示している。
そのメカニズムとしては、CFTRは膨張した細胞の容積調節に関与しうるという野間らの報告(Wang et al. 1997 J Gen Physiol)を考え合わせると、おそらくCFTRアニオンチャネルの開口(によるクロライド流出)によって、心筋細胞がネクローシス死(細胞破裂死)をおこす前に膨張した細胞容積が調節されることによるものと考えられる。
再灌流直後は、心筋梗塞患者に治療を施すことができ、しかも薬物が病巣に到達しうるタイミングでもあるので、本研究成果は心筋梗塞に対する新しい治療法が開発される可能性を開くものである。
平成25年度 生理学研究所共同利用研究の公募のお知らせ
公募事項
(1) 一般共同研究
(2) 計画共同研究
(3) 研究会
(4) 国際研究集会
(NIPS International Workshop)
(5) 超高圧電子顕微鏡共同利用実験
(6) 生体機能イメージング共同利用実験
※いずれも平成25年4月~平成26年3月 の期間
申込資格
大学及び国・公立研究所等の研究機関の研究者又は所長が
これと同等の研究能力を有すると認める者
申込期限
平成24年12月14日(金)(必着)
申込み希望の方は公募要項及び生理学研究所ホームページのhttp://www.nips.ac.jp/research/collabo/を参照してください。
なお,申込用紙はホームページからダウンロードすることが
できます。
(総合研究大学院大学)
“平成25年度生命科学研究科生理科学専攻の博士課程大学院生(5年一貫制及び3年次編入)を募集しています。
お問い合わせ
国際研究協力課大学院担当
TEL〈0564〉55 - 7139 へ
〔申 込 先〕
〒444-8585 岡崎市明大寺町字西郷中38番地
自然科学研究機構
岡崎統合事務センター
総務部 国際研究協力課 共同利用係
電話〈0564〉55-7133(ダイヤルイン)
朝日新聞出版発行の 「2013年度大学ランキング」(2012年4月発行)で、トムソン・ロイター社による2006-2010年における論文引用度に関するランクが発表されま した。 研究者人口や注目度の高さや時流などを無視して安易に分野を越えての比較を行うことはできませんが、「総合」で生理学研究所は第4位に、また、「神経科学 分野」では生理学研究所が第3位にランクされました。
大学・機関 | 論文数 | 引用度指数 | |
1 | 国立遺伝学研究所 | 620 | 144.2 |
2 | 基礎生物学研究所 | 524 | 135.8 |
3 | 高エネルギー加速器研究機構 | 2,514 | 133.2 |
4 | 生理学研究所 | 618 | 131.9 |
5 | 分子科学研究所 | 1,202 | 131.6 |
6 | 首都大学東京 | 2,759 | 131.3 |
7 | 京都薬科大学 | 749 | 127.4 |
8 | 奈良先端科学技術大学院大学 | 1,741 | 124.3 |
9 | 神奈川大学 | 954 | 123.6 |
10 | 東京大学 | 35,075 | 122.7 |
11 | 総合研究大学院大学 | 1,987 | 122.1 |
12 | 京都大学 | 25,918 | 120.8 |
13 | 順天堂大学 | 2,705 | 120.7 |
14 | 立教大学 | 651 | 120.4 |
15 | 星薬科大学 | 715 | 118.7 |
大学・機関 | 論文数 | 引用度指数 | |
1 | 埼玉医科大学 | 98 | 143.1 |
2 | 群馬大学 | 259 | 135.4 |
3 | 生理学研究所 | 364 | 134.5 |
4 | 東京大学 | 1,075 | 130.8 |
5 | 兵庫医科大学 | 105 | 129.4 |
6 | 大阪大学 | 631 | 128.9 |
7 | 昭和大学 | 158 | 127.0 |
8 | 順天堂大学 | 204 | 126.6 |
9 | 九州大学 | 410 | 125.4 |
10 | 岡山大学 | 261 | 124.8 |
10 | 金沢大学 | 258 | 124.8 |