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Channel: 生理学研究所/リリース
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細胞は膨張時に抗酸化生体分子グルタチオンをアニオンチャネルを通って放出する

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概要

 1価の陰電荷を持つ(アニオンの)トリペプチドであるグルタチオン(GSH)は、生体内で産生される最強の抗酸化作用生体分子です。グルタチオンは細胞内で産生されて、細胞外にたえず放出され、細胞表面の酵素で分解されている。この細胞外放出は種々の刺激で亢進するが、その放出メカニズムには不明の点が多かった。
 今回、ラット胸腺から単離したリンパ球からのグルタチオン放出は、低浸透圧刺激による細胞膨張時に著しく亢進することを見出した。一つの胸腺リンパ球からの放出率は、ふだんは8000分子/秒であるが、およそ1/2の浸透圧の溶液中では61000分子/秒にも上昇することが判明した。
 その低浸透圧性放出の温度感受性は低く、活性化エネルギーは約5 kcal/molであることから、このグルタチオン放出輸送は主として(チャネルなどを介する)拡散性メカニズムで行われていることが示唆された。また、この放出は容積感受性外向整流性(VSOR)アニオンチャネルのブロッカーで最もよく抑制された。事実、パッチクランプ法によってVSORアニオンチャネル電流を測定したところ、グルタチオンを実際に伝導していることが明らかとなった。このチャネルのグルタチオン外向と内向の透過性と塩素イオン(Cl−)透過性の比はそれぞれ約0.10と0.32であった。グルタチオンの半径は約0.55 nmでCl−の半径が約0.18 nmであり、それゆえ体積はCl−より27倍も大きいにもかかわらず、グルタチオンの透過性がCl−のそれの10~32%にものぼることは、VSORチャネルのグルタチオン透過が非常に効率よく行われていることがわかる。更には、VSORチャネルのポア入口の半径は0.62 nmであり(Ternovsky, Okada & Sabirov 2004 FEBS Lett)、グルタチオンが通るのにちょうどよい大きさであることも注目される。
 この低浸透圧性グルタチオン放出は、これまで放出路候補とされてきたABCC/MRPという薬剤排出ポンプ(トランスポータ)のブロッカーでは影響を受けなかった。一方、有機アニオン・トランスポータSLC22A/OATのブロッカーではやや抑制されたが、VSORチャネル・ブロッカーの効果よりは弱く、それらの効果は相加的であった。もう一つ別の有機アニオン・トランスポータSLCO/OATPの基質は、弱いがtrans-stimulationを示すことが明らかとなった。それゆえに、浸透圧性膨張時の胸腺リンパ球からのグルタチオンの放出は、図に示すように、主としてVSORアニオンチャネルのポアを介して行われ、これにOATPやOATのような有機アニオン・トランスポータの働きが弱いが協力していることを、世界で初めて明らかにした。

 本研究成果は、ウズベキスタン科学アカデミー生物有機化学研究所とウズベキスタン国立大学のR.Z. サビロブ教授と、自然科学研究機構生理学研究所の岡田泰伸所長との、(学術交流協定に基づく)国際的共同研究によるものです。

論文情報

Sabirov R.Z., Kurbannazarova R.S., Melanova N.R. and Okada Y. (2013) Volume-Sensitive Anion Channels Mediate Osmosensitive Glutathione Release From Rat Thymocytes. PLOS ONE (2013年1月30日電子版)

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