概要
イオンチャネル等の膜機能タンパク質には、副サブユニットと複合体を作って機能するものが多くある。電位依存性K+チャネルの一つ、Kv4チャネルは神経細胞、心筋に発現し、細胞の興奮性を調節している。K+ Channel Interacting Protein(KChIP)はKv4チャネルの電流を大きくし、不活性化を遅くし、不活性化からの回復を速くするということが知られているが、詳細な調節機構は未だ不明である。これまで、結晶構造解析によって、Kv4/KChIP複合体は各々のサブユニットが4:4の量体数比(ストイキオメトリー)で結合していることが知られていたが、4:4以外の複合体が存在するのか、また存在する場合、イオンチャネル複合体の機能がどのように変化するのかについては不明であった。今回、我々はまず、Xenopus卵母細胞に打ち込むKv4.2とKChIP4 RNAの量を変化させ、両者の相対的な発現量を調節し、二本刺膜電位固定法を用いてイオンチャネル複合体の性質を電気生理学的に解析した。その結果、KChIP4の発現量依存的にKv4.2の性質が変化するという知見を得た。ここで見られた変化が、KChIP4の結合数によるものであるという可能性を検討するため、Kv4.2とKChIP4のストイキオメトリーを4:2あるいは4:4に固定するタンデムコンストラクト(各々KChIP4-Kv4.2-Kv4.2, KChIP4-Kv4.2)を作成した。両者の電気生理学的性質を比較したところ、4:4チャネルは4:2チャネルよりも速い不活性化からの回復を示し、Kv4チャネルの性質がKChIP4の結合数により調節を受けることが分かった。さらに、monomeric enhanced GFP を付加したKChIP4 (KChIP4-mEGFP)をKv4.2と共発現させ、一分子蛍光イメージング法を用いて、一つのKv4.2チャネルに結合するKChIP4の数を測定した。両サブユニットの相対的な発現量を変化させたところ、KChIP4の発現量が増加するにしたがって、Kv4.2に結合する数が増加し、最大で4つまで結合可能であることが明らかとなった。以上の結果から、Kv4/KChIPイオンチャネル複合体のストイキオメトリーは一定ではなく、両サブユニットの相対的な発現量に依存して変化すること、また、ストイキオメトリーの変化がイオンチャネルの性質に影響を与えることが分かった。
論文情報
Masahiro Kitazawa, Yoshihiro Kubo and Koichi Nakajo
The Stoichiometry and Biophysical Properties of the Kv4 Potassium Channel Complex with KChIP Subunits are Variable Depending on the Relative Expression Level
Journal of Biological Chemistry, published May 8, 2014 as doi:10.1074/jbc.M114.563452
図
KChIP4の相対的な発現量が増加するにしたがって、Kv4.2の性質が徐々に変化する様子が捉えられた(電流量の増大、不活性化過程の減速(A)、不活性化からの回復過程の加速(B))。また、KChIP4の発現量が増加するにしたがって、一つのKv4.2チャネルに結合するKChIP4の数が増えることから、Kv4.2/KChIP4イオンチャネル複合体のストイキオメトリーは固定されておらず、両者の相対的な発現量依存的に柔軟に変化することがわかった(C)。